実務メモ / リリースガイド

Kindle にリリースする手順

Markdown で書いた技術書を Amazon KDP で出すまでの手順。
時間を取られるのは執筆でも申請フォームでもなく、pandoc が吐いた EPUB を「Kindle が壊さない形」に直すところです。崩れ方は実機でしか出ないうえ、原因はほぼ決まっています。

対象Markdown で原稿を持っていて、これから Kindle 個人出版(KDP)に出す人
前提pandoc で EPUB をビルドする構成を例に書きます。Word / Kindle Create で作る場合も STEP 5 以降は同じです
実績『チームに溶け込む AI エージェント開発』をこの手順で公開。後続の 2 冊も同じパイプラインで運用中
時点2026-08-15 時点の KDP の仕様にもとづく
最終更新2026-08-15
注意価格帯・ロイヤリティ・審査基準は変わります。税務・法務の助言ではありません
関連生成AIでつくった画像と著作権Claude Codeと働く1年目の教科書(書籍ノート)
TL;DR

ひとことで

KDP の登録フォームは 1 時間で終わります。実際に効くのは EPUB の後処理で、pandoc の標準出力をそのまま上げると 目次が中表紙より前に出る・章をまたぐリンクが死ぬ・表のセルが上下中央に浮く といった崩れが Kindle 実機でだけ現れます。直し方は決まっているので、スクリプトにして毎ビルド自動で通すのが正解です(STEP 3)。

もうひとつ、後処理では直らず原稿側で決まってしまう制約が 3 つあります ——コード 1 行の長さ・タスクリスト記法・罫線図。これは書いている最中から意識しないと、全章の書き直しになります(STEP 4)。

Flow

全体の流れ

原稿が固まってから公開までは、うまくいけば 2〜3 日(うち審査が最大 72 時間)です。表紙の用意と税務情報の入力は先に済ませておくと、待ち時間が重なりません。

自分の手元でやること

  • 出す形を決める(Kindle だけ/+ペーパーバック)— STEP 1
  • 原稿を EPUB にビルドする — STEP 2
  • EPUB を KDP 互換に後処理する — STEP 3
  • Kindle Previewer で実機表示を確認する — STEP 4
  • 表紙を用意する — STEP 5

KDP 側でやること

  • アカウント・税務情報・振込口座 — STEP 6
  • タイトル情報を登録する — STEP 7
  • 価格とロイヤリティを決める — STEP 8
  • 提出・審査・公開 — STEP 9
  • 改訂して出し直す — STEP 10
Steps

手順(詳細)

各ステップの下に「詳しい手順を開く」があります。開くと、実際のコマンド・入力欄の名前・踏んだ地雷まで書いてあります。

出す形を決める(Kindle だけか、ペーパーバックも出すか)最初にやる

Kindle(EPUB)とペーパーバック(PDF)は、KDP では別タイトルとして登録し、あとで同じ商品ページに紐づけます。原稿が Markdown なら本文は同じソースから両方生成できますが、進め方の制約が 1 つあります。

ペーパーバックの表紙は、本文のページ数が確定しないと作れません。背幅がページ数で決まるからです。本文が固まる前に表紙を作り込むと、章を 1 つ足しただけで作り直しになります。

A. まず Kindle だけ出す

最短。初めてならこちら。

EPUB と表紙画像 1 枚で完結します。改訂も差し替えるだけ。ペーパーバックは後から同じタイトルに追加できるので、先に電子だけ出して反応を見る順序に不利はありません。

B. 同時に両方出す

本文を完全に凍結してから着手する。

PDF の組版(判型・ノドの余白)、見開き 1 枚の表紙 PDF、ISBN の判断が追加で必要です。本文確定 → ページ数確定 → 背幅計算 → 表紙作成の順を崩さないこと。

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先に決めておくと後戻りしないもの

  • 書名とサブタイトル — 公開後も変更できますが、URL に入る ASIN は変わらず、SNS で告知した後の変更は読者側の混乱になります。
  • 著者名の表記 — 漢字かローマ字か。1 冊目で決めた表記が著者ページの単位になるので、シリーズで揃えます。
  • レーベル(出版社名) — 任意項目ですが、入れるとストアの「出版社」欄に出ます。個人でも屋号やレーベル名を名乗れます。
  • DRM の有無公開後に変更できません(STEP 7)。技術書は引用・再利用の利便を取って「なし」にする判断もあります。

ペーパーバックの仕様(判型・背幅・ISBN)は、このページ下部の「ペーパーバックも出す場合」にまとめてあります。

原稿を EPUB にビルドするpandoc

章ごとの Markdown を pandoc で 1 つの EPUB に束ねます。手で並べ替えると事故るので、ファイルの並び順はビルドスクリプトの配列で持つのが確実です。目次は --toc --toc-depth=2 で自動生成させます。

brew install pandoc          # 3.x を使う
./build.sh                   # 章を結合 → EPUB 出力 → KDP 後処理まで一気に
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1. 最小のビルドコマンド

LANG=ja_JP.UTF-8 pandoc \
  --metadata-file=metadata.yaml \
  --css=style.epub.css \
  --epub-cover-image=cover.png \
  --epub-title-page=false \
  --toc --toc-depth=2 \
  --metadata=toc-title:"目次" \
  --syntax-highlighting=tango \
  -o "書名.epub" \
  000-中表紙.md 00-はじめに.md 01-*.md ... 奥付.md

--epub-title-page=false を付けているのは、pandoc が自動生成するタイトルページを止めて、自分で書いた中表紙(Markdown)を使うためです。自動生成のものはレイアウトを制御できません。

2. metadata.yaml に要るもの

項目入れる値効き先
title / subtitle書名・副題端末の書誌情報・ライブラリ表示
creator著者名(role: author を添える)著者名の表示
langjaこれが無いと日本語の禁則・字送りが崩れる
date / rights発行日・著作権表記書誌情報
identifier任意の一意な文字列(UUID 可)EPUB の必須項目。無いと警告が出る
publisherレーベル名。使わないなら書かない空タグで残すと後処理で削る羽目になる(STEP 3)

3. 図はビルド時に画像へ変換しておく

Mermaid のコードブロックは Kindle ではただのテキストとして出ます。ビルドの前処理で mmdc を通して PNG にし、![](...) に置換してから pandoc に渡します。変換に失敗したらコードブロックのまま残す(ビルドは止めない)ようにしておくと、図がまだ無い段階でも確認を進められます。

4. ビルドできたら中身を覗く

unzip -l "書名.epub" | head -30   # 構造と章ファイル数を確認
ls -lh "書名.epub"                # サイズ(配信コストに効く。STEP 8)

EPUB を KDP 互換に後処理するここが本番

pandoc の出力は汎用 EPUB としては正しいが、KDP 向けには最適ではありません。手で直すと再ビルドのたびに消えるので、ビルドスクリプトの最後に後処理を固定で挟みます。実際に踏んで潰した 6 点+再パックの作法が以下です。

症状原因直し方
KDP の変換で表示が乱れる content.opf に pandoc が付けた prefix="ibooks:…" が残っている 属性ごと削除する。Apple Books 用の名前空間で、KDP には不要
Apple 専用ファイルが混ざる META-INF/com.apple.ibooks.display-options.xml が同梱される 削除する
メタデータの警告が出る 空の <dc:publisher></dc:publisher> が残っている 空タグを削除する(そもそも metadata に書かない)
目次が中表紙より前に出る pandoc は目次(nav)を表紙の直後に置く。Kindle は linear="no" でも順序どおり表示する nav に linear="no" を付けたうえで、spine 上で中表紙の後ろへ移動する。狙いは 表紙 → 中表紙 → 目次 → 本文
章をまたぐリンクが効かない pandoc は章ごとに別 XHTML に割る。href="#ch05"同じファイル内にしか届かない 全 XHTML の id を集めて対応表を作り、href="ch05.xhtml#ch05" に書き換える
表のセルが上下中央に浮く Kindle は外部 CSS の vertical-align を無視することがある。行の高い表で見出し列だけ中央に見える td / th に HTML 属性 valign="top"style="vertical-align:top"両方を付ける
EPUB として認識されない 展開 → 修正 → 再 zip したときに mimetype が圧縮されている/先頭に無い mimetype を最初に無圧縮(ZIP_STORED)で書き、残りを圧縮して追記する
「PDF ではリンクが効くのに EPUB だけ効かない」の正体

上表の 5 番目です。PDF は 1 ファイルなのでアンカーがそのまま解決しますが、EPUB は章ごとに分割されるため同じ Markdown・同じリンク記法でも EPUB でだけ死にます。相互参照の多い本ほど気づきにくく、Previewer で 1 つずつタップして初めて分かります。後処理で機械的に解決するのが唯一まともな対処です。

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後処理スクリプトの骨格

EPUB は zip なので、展開 → テキストとして直す → 規則どおりに再パックで足ります。Python 標準ライブラリだけで完結します。

import zipfile, re, os, shutil, tempfile

tmp = tempfile.mkdtemp()
with zipfile.ZipFile(epub) as z:
    z.extractall(tmp)

# 1) OPF を直す
opf = open(f"{tmp}/EPUB/content.opf", encoding="utf-8").read()
opf = re.sub(r'\s*prefix="ibooks:[^"]*"', '', opf)
opf = re.sub(r'\s*<dc:publisher>\s*</dc:publisher>', '', opf)
opf = opf.replace('<itemref idref="nav" />',
                  '<itemref idref="nav" linear="no" />')
# nav と直後の itemref(=中表紙)を入れ替える
opf = re.sub(r'(<itemref idref="nav" linear="no"\s*/>)(\s*)(<itemref idref="[^"]+"\s*/>)',
             r'\3\2\1', opf, count=1)

# 2) 全 XHTML を走査:id→ファイル名の表を作り、href="#id" を書き換え
# 3) td/th に valign="top" と inline style を付与
# 4) Apple 専用ファイルを削除

# 5) 再パック:mimetype だけ無圧縮で先頭に
with zipfile.ZipFile(out, "w", zipfile.ZIP_STORED) as z:
    z.write(f"{tmp}/mimetype", "mimetype")
with zipfile.ZipFile(out, "a", zipfile.ZIP_DEFLATED) as z:
    ...  # 残りを追記

実行タイミングを固定する

手で走らせると必ず忘れます。ビルドスクリプトの最後で無条件に呼ぶようにして、「ビルドした EPUB は常に後処理済み」という状態を保ちます。

# build.sh の末尾
python3 fix_epub_for_kdp.py "$OUTPUT"

やり過ぎないこと

KDP は EPUB を独自形式に変換して配信するため、CSS で細かく作り込んでも端末側で効かないものが多いです。後処理で触るのは「構造」と「Kindle が無視する指定の代替」に留め、見た目の調整は Previewer で確認しながら最小限にします。

Kindle Previewer で実機表示を確認する無料

Amazon 公式の無料ツールで、KDP が実際に行う変換を通した状態を見られます。ブラウザや macOS のプレビューで EPUB を開いても、ここで出る崩れは分かりません。提出前に必ず 1 周するのが前提です。

下の表が、実際に潰した崩れの一覧です。上 3 つは後処理では直りません(原稿側の書き方で決まる)。

症状原因対処
コードブロックが右端で切れる Kindle は横幅が狭く、長い行を折り返さず切り捨てる 原稿側で 1 行 60 文字以内に折る。長いコマンドは \ で改行、JSON は整形して分割
チェックボックスが [ ] のまま出る Kindle は Markdown のタスクリスト記法に対応しない ビルド前処理で通常の箇条書きに変換する(sed 's/^- \[ \] /- /'
罫線図(│ ─ └)がガタガタに折れる 等幅前提の図が折り返される・行間が開いて縦線が途切れる 図ブロックだけ専用クラスを付け、折り返し無効・行間を詰める CSS を当てる
表が横にはみ出す 列が多い/1 列目が長い 3 列以内に削る。定義表は 1 列目の幅を内容幅に寄せる
図が粗い・出ない SVG やコードブロック由来の図をそのまま置いている PNG に変換して埋め込む。文字が入る図は拡大表示に耐える解像度で出力する
フォント最大で段組が壊れる 固定幅・固定余白を CSS で指定している 相対単位に直す。最小・最大の両方で 1 周見る
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確認する順番

  1. 表紙が出るか。書影の下端が切れていないか。
  2. 並び順が 表紙 → 中表紙 → 目次 → 本文 になっているか。
  3. 目次の全項目をタップして飛べるか。章をまたぐ相互参照も 2〜3 個試す。
  4. コードブロックが右で切れていないか。長い行が多い章から見る。
  5. の折り返しとセルの縦位置。
  6. の表示と、タップ拡大したときの文字の読めるかどうか。
  7. フォントサイズ最小・最大で 1 周。ここで初めて出る崩れがある。

長い行を機械的に探す

# 60 文字を超える行を全 Markdown から拾う
grep -n '.\{61\}' *.md | head -40

散文の行は折り返されるので問題ありません。コードブロック内だけを見ます。ここを最初に片付けておくと、以降の改稿で崩れが再発しません。

Previewer で見つからないもの

Previewer は変換結果の再現度が高い一方、実機のページ送りの速さ・目次の使い勝手までは分かりません。公開後、自分の端末で 1 冊分読み通すと、章の切れ目や図の入れ場所の粗が見えます。改訂で直せるので、そこは公開を止める理由にしません。

表紙を用意する1600 × 2560 px

Kindle の表紙は比率 1:1.6・長辺 2560 px が推奨です。中途半端な比率(例: 1:1.49)で作ると、ストアのサムネイルや端末のライブラリで余白が付いたり切れたりします。最初からこの比率でレイアウトを組むのが確実です。

項目要件
推奨サイズ1600 × 2560 px(縦長・比率 1:1.6)
形式JPEG または TIFF
カラーRGB(CMYK で作ると色が転ぶ)
解像度300 dpi 相当以上を推奨
ファイルサイズ50 MB 以下
文字画像に焼き込む。サムネイルで読めるのはタイトル 1 行だけという前提で組む
生成 AI で表紙を作る場合

KDP には AI 生成コンテンツの申告欄があり、本文・画像・翻訳それぞれについて「AI-Generated(AI が生成)/AI-Assisted(AI で補助)」を申告します。申告自体は出版の可否に直結しませんが、正しく申告することが規約上の前提です。権利面の考え方(独占できるか・侵害しないか・商用に使えるか)は別の実務メモに整理しました。

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作り方の分担

画像生成にタイトル文字まで描かせると品質が安定しません。絵は生成 AI、文字とレイアウトはスクリプトかデザインツールで合成する分担にすると、改題や版数変更のたびに作り直せます。

# 絵(背景)+タイトル文字を合成して 1600×2560 で書き出す
python3 gen_cover.py

合成をスクリプト化しておく利点は、「自分の創作的寄与」の手順が記録として残ることでもあります。プロンプト・生成日・加工内容を一緒に残しておきます。

サムネイル前提のチェック

  • 150 px 程度に縮小して、タイトルが読めるか確認する。読めなければ文字を大きくする。
  • 背景が暗い場合、ストアの白背景に浮くか(枠が無くても本に見えるか)。
  • 実在のロゴ・商標・判読可能な他社名・実在人物の顔が写り込んでいないか。

ペーパーバックの表紙は別物

電子の表紙は「表 1 だけ」の 1 枚画像ですが、ペーパーバックは表 4・背表紙・表 1 が地続きの 1 枚 PDF です。共用できません(下部のペーパーバックの節)。

KDP アカウントと税務情報を用意する先に済ませる

kdp.amazon.co.jp に Amazon アカウントでログインし、出版者情報・税務情報・振込口座を登録します。原稿より先に済ませておくと、審査待ちと重ならずに済みます。

税務情報インタビューを飛ばさない

KDP は米国の会社が支払元になるため、税務情報を出していないと米国で 30% が源泉徴収されます。日本在住者はオンラインの税務インタビューでマイナンバー(個人番号)または法人番号を申告すると、日米租税条約にもとづき源泉徴収率 0% を選べます。ここを空欄のまま出版すると、印税から 3 割引かれた状態で振り込まれます。

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登録する 3 つ

  1. 出版者情報 — 氏名または屋号・住所・電話番号。ストアに出るのは著者名とレーベル名で、住所ではありません。
  2. 税務情報 — オンラインのインタビュー形式。個人なら「個人」を選び、居住国を日本、納税者番号としてマイナンバーを入力します。完了ステータスが「完了」になっているかを必ず確認してください。
  3. 振込口座 — 日本の銀行口座を登録できます。マーケットプレイスごとに支払い設定があるため、amazon.co.jp 以外(米国・欧州など)の口座設定も埋めておくと、少額でも取りこぼしません。

支払いのタイミング

売上は約 60 日後に月次で支払われます(マーケットプレイスごとに最低支払額あり)。公開直後に振り込まれるものではないので、収支の期待値だけ合わせておきます。

税務の扱いは個々の状況で変わります。ここに書いたのは KDP の入力欄の話であり、確定申告や所得区分の判断は税理士・税務署に確認してください。

タイトル情報を登録する日本語書籍のハマりどころ

KDP の「新しい Kindle 本を作成」から入力します。日本語書籍で戸惑うのは、タイトル・サブタイトル・著者名・レーベルのそれぞれに「フリガナ(カタカナ)」と「ローマ字」を求められることです。空欄では先に進めません。

入力欄入れる値と注意
本のタイトル書名。フリガナは数字の読みまで自分で決める(「1年目」→ イチネンメ)
サブタイトル任意。付けると検索に載る語が増える。フリガナ・ローマ字も同様に必要
ローマ字表記ヘボン式・長音記号なし(Sōjūseki → Sojuseki)。ダッシュ は半角 - に置換
シリーズ続刊がある場合のみ。1 冊目で作った名前が正になるので表記を固定する
レーベル出版社欄に出る。個人でも屋号・レーベル名を名乗れる
内容紹介HTML 可・最大 4000 文字<h2> <p> <ul> <strong> <br> 程度は通る
キーワード7 個まで。タイトルに入っている語を重複させない(枠の無駄)
カテゴリー3 つまで。「コンピュータ・IT → 人工知能/プログラミング」など
ページめくり方向横書きの技術書なら左から右
DRM公開後に変更できない。ここだけは決めてから押す
出版地域権利を持っているなら「全世界」
ISBNKindle 版は不要。ASIN が自動で付く
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入力値は Markdown で先に作っておく

フォームに直接書くと、改訂のたびに手元との差分が分からなくなります。提出項目を 1 枚の Markdown にまとめてリポジトリに置くと、2 冊目以降も同じ表を埋めるだけで済みます。フリガナ・ローマ字・内容紹介の HTML・キーワード・カテゴリを列挙しておきます。

内容紹介の書き方

ストアでは最初の 2〜3 行しか展開されずに表示されます。冒頭に「誰の何を解決する本か」を置き、目次の羅列は後ろに回します。技術書なら、対象読者と前提知識を明記しておくと返品・低評価が減ります。

キーワードの選び方

タイトルとサブタイトルに含まれる語は、キーワードに入れなくても検索対象です。本文の中身を表すが書名に無い語(想定ツール名・関連分野・読者の職種)に 7 枠を使います。

AI 生成コンテンツの申告

本文・画像・翻訳それぞれについて、AI を使ったかを申告する欄があります。表紙を生成 AI で作ったなら画像側で申告します(STEP 5)。

価格とロイヤリティを決める70% の枠は狭い

ロイヤリティは 70% と 35% の 2 択ですが、70% を選べるのは価格が ¥250〜¥1,250 の範囲にあるときだけです。¥1,300 にした瞬間に 35% へ落ちるので、¥1,250 の壁を意識して決めます。

70%35%
選べる価格帯(日本)¥250〜¥1,250これより広い範囲を設定できる
配信コスト差し引かれる(ファイルサイズ課金)差し引かれない
向くケース個人の技術書はほぼこちら高額な専門書・図版が非常に多い本
図版の多い技術書は EPUB のサイズを見てから決める

70% ではファイルサイズに応じた配信コストが印税から引かれます。図を PNG で大量に入れた本はここが効くので、ls -lh で EPUB のサイズを確認してから価格を決めます。サイズを削りたいときは、まず図の解像度と枚数を見直します。

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KDP セレクトに入れるか

KDP セレクトに登録すると Kindle Unlimited(読み放題)の対象になり、読まれたページ数に応じた分配を受けられます。代わりに 90 日間の独占が条件で、同じ本を他所(技術書典・BOOTH・Zenn・自サイトの PDF 配布など)で配れなくなります

  • 入れる — Kindle 以外で配る予定がない。読み放題からの流入を取りたい。
  • 入れない — 自サイトや同人即売会でも売る。サンプル PDF を自分で配りたい。

90 日ごとの自動更新なので、更新のタイミングで見直せます。1 冊目は入れてみて反応を見る、という決め方でも取り返しはつきます。

価格の考え方

個人の技術書は ¥500〜¥1,250 に集まります。ページ数より「読者が浮かせられる時間」で決めるほうが納得感が出ます。公開後に価格は変更できるので、初値で悩みすぎないことです。

提出・審査・公開最大 72 時間

EPUB と表紙をアップロードし、プレビューを確認して「Kindle 本を出版」を押します。審査は通常 72 時間以内。完了するとメールが届き、ストアに並びます。

  • 公開されると ASIN が付き、https://www.amazon.co.jp/dp/<ASIN> で直リンクできます。自分のサイトや告知はこの URL を使います。
  • ストアページへの反映(書影・内容紹介・関連付け)は、公開直後は不完全なことがあります。数時間〜1 日で揃うので、慌てて直さないこと。
  • ペーパーバックも出す場合、電子と紙は別々に審査され、公開後に同じ商品ページへ紐づきます。
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差し戻しになりやすいもの

  • 表紙と本文のタイトルが一致していない — 中表紙・奥付まで含めて表記を揃える。
  • 外部リンクが多すぎる/宣伝目的に見える — 本文からの自サイト誘導は控えめに。
  • フリー素材・引用の権利表示漏れ — 出典を本文か奥付に書く。
  • プレビューで開けない EPUB — 多くは mimetype の再パック事故(STEP 3)。

公開日を指定したい場合

予約注文として日付を指定できます。ただし予約設定には締切があり、その後は原稿を差し替えられない期間が生じます。急ぎでなければ、審査を通してからそのまま公開するほうが単純です。

改訂して出し直す運用

誤字修正から章の追加まで、同じ手順で差し替えます。Markdown を直す → 再ビルド → 後処理 → KDP でコンテンツを差し替え → 再審査。ここまで自動化してあると、改訂の心理的コストがほぼゼロになります。

既存の購入者には自動で届かない

本文を差し替えても、すでに買った読者の端末が自動で新版に更新されるとは限りません。大幅な改訂をしたときは KDP サポートに更新の連絡をするか、SNS・自サイトで告知します。「買ってくれた人に届く前提」で改訂計画を立てないことです。

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反映の早さが違う

変えるもの反映
価格比較的早い(数時間〜)
内容紹介・キーワード・カテゴリ審査を挟むが本文より早い
本文(EPUB)・表紙再審査。最大 72 時間

改訂のたびにやること

  1. ビルド(後処理まで自動で通す)
  2. Kindle Previewer で変更した章だけ確認(全周は大改訂のときだけ)
  3. ページ数が変わったら、ペーパーバックの背幅と表紙 PDF も作り直す
  4. 奥付の版数・発行日を更新する
Paperback

ペーパーバックも出す場合

同じ Markdown から PDF を組んで、紙でも出せます(印刷は注文ごとのオンデマンド)。電子と決定的に違うのは、ページ数が寸法に直結することです。本文が 1 ページ増えれば背幅が変わり、表紙を作り直すことになります。

項目内容
本文ファイルPDF。フォントは必ず埋め込む
判型(Trim Size)技術書なら A5(148 × 210 mm)が扱いやすい
余白最小 6.35 mm。ノド側はページ数に応じて厚く取る(例: 上20 / 下20 / 外18 / ノド24 mm)
背幅ページ数 × 0.002252 inch(白色用紙・モノクロ)。189 ページなら約 10.8 mm
背文字100 ページ未満は入れられない
表紙表 4 + 背 + 表 1 の見開き 1 枚 PDF。裁ち落とし 3.175 mm を足した寸法で作る
ISBNKDP の無料 ISBN を使うか、自前で取得する(下記)
順番を守る

本文確定 → ページ数確定 → 背幅計算 → 表紙 PDF 作成。この順を崩すと必ずやり直します。表紙の総寸法は KDP の Cover Calculator に「判型・ページ数・用紙」を入れて出た値を採用します(自分で計算した値ではなく、出力されたテンプレートに合わせる)。

無料 ISBN と自前 ISBN

電子版(Kindle)には ISBN は不要です。紙だけの判断になります。

Traps

実際に踏んだところ

症状から引けるように 4 つだけ。いずれも「原稿は正しいのに Kindle でだけ変」という形で現れます。

1

アップロードした EPUB が「開けない」と言われる

→ 再パック時に mimetype を圧縮してしまっている

EPUB を展開して手で直し、zip -r で固め直すとこれをやります。mimetype だけは最初のエントリに無圧縮で書くのが仕様です。後処理をスクリプト化するときの最初の関門でもあります。

2

目次が中表紙より前に出てくる

→ pandoc は nav を表紙直後に置き、Kindle は linear="no" を無視して順に表示する

linear="no" を付けただけでは直りません。spine 上で nav を中表紙の後ろへ動かす必要があります。「非表示にする指定」ではなく「並び順そのもの」を直すのが正解でした。

3

表の 1 列目だけ上下中央に浮いている

→ Kindle が外部 CSS の vertical-align を無視している

CSS を強くしても効きません。HTML 属性の valign="top" とインライン style の両方を各セルに直接付けて解決しました。CSS の指定だけを信じないのが Kindle 対応の基本姿勢です。

4

相互参照リンクが EPUB でだけ死ぬ

→ 章ごとに XHTML が分割され、href="#id" が同一ファイル内で解決されない

PDF では動くので、PDF で確認して満足していると気づけません。id とファイル名の対応表を作って一括で書き換えます。参照の多い本ほど効くので、後処理の中でいちばん価値がありました。

Checklist

提出前チェックリスト

チェック状態はこのブラウザに保存されます。

References

参照先

本ページは 2026-08-15 時点で実際に出版した際の手順を整理したものです。KDP の仕様・価格帯・審査基準は予告なく変わります。税務および権利に関する記述は一般的な情報の整理であり、法的・税務的助言ではありません。重要な判断は KDP の最新ヘルプおよび専門家に確認してください。